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心の洗剤、お題目

 例年に比べ、10日ほど稲刈りが遅れているとか。雨降りでもそうですが、あまり天気が良すぎても(稲刈りやお出かけやらで)、お参りに来られる方の数に影響が出るようです。
 そういった意味で、今日はお参りが少ないかと思いましたが、予想に反して、大勢おいで下さっているようです。お参りの方が一人しかいらっしゃらないと見つめ合って話さなければなりませんが、今日はそうしないですみそうです(一同笑)。

 人というのは、半年くらいしか誓いが持たないそうです。お彼岸が春秋2回あるのも、そういったことが関係しているのかも知れません。

 心をきれいにし、心新たに生活することを仏様に誓う日が、お彼岸の中日なのです。

 数年前より、お彼岸の法要の際は、お経をみなさんで唱えてもらうようにしました。共に唱えるということに意味があるのです。だまってお経を聞いていると、苦痛に感じたり眠くなったりする人もいます。人任せだからそうなるのです。自分も一緒になって唱えますと、参加意識が出て、「ああ、お参りして良かったな」という気持ちになります。お参りする前は、家でのイライラを持ち込んでいますが、お参りし、お題目やお経を唱えると、心が和んできます。
…この境地まで至ってない、という方は、どうぞ時間がありますので、このあともたっぷりとお参りしていって下さい(一同笑)…。
そんな心持ちでお参り頂くとよろしいかと思います。

 世の中、暗いニュースばかりで、なかなか明るい話題を聞きません。
 しかし先日、女子高生の次のような投稿を見つけました。
 「ゆとりのない母親、常識のない母親が増えているように思う。やたら怒る、バスや電車の座席に靴を履かせたままの小さい子を立たせる、子供が騒いでも注意しない、携帯電話に夢中で子供のことを忘れる。親が子を無視していれば、そのゆとりのなさを先の時代に引き継ぐ悪循環が起きるかも知れない。そんな母親が増えれば、愛情知らず、限度知らずの子供が増え、少年犯罪が激増するのではないか。子供のよい手本となる母親が増えて欲しい」(要旨)。
 こう思う女子高生がいて、安堵しました。
 私も、子供のすぐそばで たばこを吸う母親を見かけました。子供に対する配慮があるならば、せめて子供のそばでは吸わない方が良いのではないでしょうか。
 そういう母親が増えていますが、周りは注意しません。見て見ぬふりをするわけです。ただ、中には「具体的にどうして良いのかわからない」という方もいらっしゃいます。
・勇気を持って注意する
・せめて自分の子や孫にはしっかり教える
ということが大切なのです。

 地球温暖化と言われていますが、ある試算に拠りますと、90年後
…「90年後」と聞いて、「ああ私は生きてないから関係ない」と思われた方はおりませんか(一同笑)。あなたのお孫さんなど子孫の時代なのです…
には、
・二酸化炭素が今の倍
・梅雨が長引き、明けるのは8月
・九州を中心に降水量が2割は増える
そうです。
 ここ最近、台風が増え早い時期に来るようになりました。大雨も増えました。梅雨明けも遅くなっています。90年後の温暖化が今始まっているともいえるのではないでしょうか。
 日々気をつけなければならないことです。

 私の話はよく「堅い」と言われます。それに比べて角田山のお話しは面白いと好評です(一同笑)。角田山の話しは6月(開山会)にお願いするとして、その前後を私が話すわけですが、全て覚えて頂く必要はありません。大事なことだけお持ち帰り頂ければいいのです。それは、
・この世界は、安閑としていられる世界ではなく
・ひとにまかせず
・自分が行動する
ということです。それを踏まえてよりよい世の中にしていかれると良いのではないでしょうか。

 その実践のために 心を強くする源が お題目です。

 『立正安国、お題目結縁運動』というものを宗門が進めております。簡単に言うと、「一人一人が 人のためになることを勧め、暮らしやすい世の中にしていこう。お題目を知らない人に、お題目を唱えると心やすくなる事を伝えよう。」ということです。

 よく「お題目を唱えたときのメリットは何ですか」と聞かれます。それは、
・心が落ち着く
・他人の幸せを願えるようになる
ということです。
 「病気が治る」とか「金儲けができる」とか言われますが、正確ではありません。例えば、商売をしている人が、人の幸せを願えるような心を持っているとしたら、そこには人が集まり、結果としてお金も集まるということなのです。ただ座してお題目を唱えていても、お金は入ってきません。

 「手や顔の汚れを落とすことはあれども、心の垢を落とすこと難し」と昔から言われています。今日は、心の垢を落とす日なのです。
…だからといって、ただ胸をこすっても赤くなるだけですが(一同笑)…
それに使う洗剤がお題目なのです。
 胸に手を当ててお題目を唱えてみて下さい。お題目を唱えると、心が洗われ、すっきりした気持ちになります。このときに垢が落ちていることを自覚して下さい。これを繰り返すことでたくさんの垢が落ちていくのです。そして、これがお題目の功徳なのです。ぜひ、自宅に帰られたら心を洗って下さい。
 御自身の心が洗われたら、今度は御主人又は奥さんにも勧めて下さい。胸に手を当てて唱えるわけですが、御主人または奥さんの胸を触って
…「いまさら何しゃんだ」と言われるかも知れないので、自分で触るよう言っても良いですが(一同笑)…
お題目を唱えるよう勧めて下さい。
 ほとんどの方は、人の心をすっきりさせる方法を知らないのです。だから、お酒やたばこに頼ってしまうのです。

 次にお話しすることは、以前お話ししたことがあるので御存知の方もいらっしゃるかも知れません。

 私たちがお経を読む時は、
・「自我得仏来」と漢文そのまま読む場合…真読といいます…と、
・「我れ仏を得てよりこのかた」と読み下す場合…訓読といいます…
があります。
 お釈迦様はインドの言葉でお説きになられましたが、それを 今 私たちが目にしている漢文に翻訳したのが鳩摩羅什(くまらじゅう、クマーラジーバ)という方です。
 鳩摩羅什が翻訳した法華経も インドの言葉で説かれた法華経と同じで、その一文字一文字に功徳があるとされています。この功徳を頂戴するために真読するのです。
 とは言え、音を聞いているだけでは意味がわかりません。意味をわかりやすくするために訓読するのです。
 いずれにせよ、その功徳を自分のものにせず、来世にいらっしゃる御先祖様に手向けるのが「回向」であり、これが法事をする意味なのです。「昔からやっているから」法事をするのはないのです。

 朝のおまいりもそうです。これには、
・今日一日よろしくお願いします、
・お唱えしたお経の功徳を来世の御先祖様へ手向けます
という意味があります。
 そう聞くと、毎朝お参りすることの大切だ、という気になったのではないでしょうか。お参りの しだめ は出来ないのです。「今日1時間したら今週はいいや」という気持ちではダメなのです。毎日…ちょっとでも良いので…お参りすることに意味があるのです。

 先ほどとお読みしましたお経に「今此の三界は皆これ我が有なり。其の中の衆生は悉くこれ我が子なり」とありました。
 この世の人々は皆仏様の子なのです。それに気付くと、功徳をもらい仏様の教えを信じて生きやすくなります。

 日蓮聖人は「蔵(くら)の財(たから)よりも身の財すぐれたり。身の財より心の財第一なり。」と仰っております。
 蔵の財、お金のことです。確かにお金も大事です。お金がないと生活出来ません。でも、お金があっても病気していたらどうでしょうか。
 さらには、お金があっても元気であっても、「自分が、自分が」と自己中心的で人の迷惑を顧みない、つまり、心の財がなかったら、どうでしょうか。とても心やすく生活することは出来ません。
 「金があれば何でも…」という人がいますが、心の財がなければ、…打算的な、金目当ての人は寄ってくるでしょうが…心から話せる人は寄ってきません。人と人とのまじわりから得られる本当の楽しみは、心の財がないと得られないのです。
 だから、心の財が大切なのです。

 自分のお墓はきれいにしたとき、ふと見ると、小さなゴミが一つ残っていました。それを、つまんでそっと隣のお墓にやってしまう人がいました(一同笑)。こういう人は心が曇っているのです。
 法福寺のお墓は風が強いのです…みなさん御存知でしょう…が、10年ほど前、こういうことがありました。
 その時も風が強く、ろうそくに火を付けるためにこすったマッチが10本ほどになってしまいました。そのマッチ、どうするのかと思って見ていたら、隣のお墓の見えにくい所へ…(一同笑)。こういうことをしてしまった人は、心が曇っていると思って欲しいです。

 次はお願いです。
 お墓にお供物を上げられる…上げることは、誠に結構なのですが…上げっぱなしの方がいます。その時は良いかもしれませんが、あとから烏などが食い散らかし、とても見栄が悪くなります。おまいり後にお持ち帰り頂くか、さもなければ翌日にでも取りに来て頂きたいのです。
 お墓は御先祖様の家です。思いやりの心を持って接して頂きたいです。その思いやりの心を持つためにも、お題目は大事です。

 全てはお題目に通じます。洗剤、汚れをふくもの、自分を良くする薬なのです。聞くだけではだめです。自分で唱えてこそ、自分のものになるのです。
 これを御理解頂ければ、今日お参り頂いた意味があるのです。

 最後に、ますますの御精進をお願いしまして、お彼岸の法話とさせて頂きます。長時間の聴聞御苦労様でした。
平成18(2006)年秋季彼岸会法話より

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